いるか喫茶バー閉店のお知らせ

いるか喫茶は昨年末をもちまして閉店いたしました。
2001年10月2日より21年間長らくのご愛顧誠にありがとうございました。
いるか喫茶バーを愛してくださったすべての人に感謝を込めて
ハッピー・ニュー・イヤー。
今後はまたちがった形でお会いできればと思います。
気が向いたときにたまに覗いてみていただければ幸いです。
それでは、また、いずれ。

テナント募集のお知らせ

いるか喫茶の店舗部です。
詳しくは京都ライフテナント事業部
下記ページからお問い合わせください。
事業用テナント
ただし、申し訳ございませんが飲食店は不可です。
医療、介護系の業種でお探しの方に。

いるか喫茶バーフリーマーケットのお知らせ

食器、本、マンガ、ライトノベルなどのフリマをしています。
好評につき食器などはほとんどなくなりましたが漫画や本はまだたくさんあります。
ジモティで「いるか喫茶バー」で検索していただければ出品リストが出ます。


About irukakiss@BAR

Lunchtime Open 木・金・土
AM11:00~PM2:30
      Last Order PM2:00
      Close 日・月・火・水・祝日

BARtime Open 木・金・土
PM7:00~PM11:00
      Last Order PM10:30
      Close 日・月・火・水・祝日

4台    〒606-8161 京都市左京区一乗寺木ノ本町5




当店は、お一人様かお二人様のための店です。
三人様以上には十分に対応できません。悪しからずご了承ください。


誰にだって語るに足りる物語がある。いつの時代も音楽とショートカクテルは、人それぞれの物語の代弁者だった。
BOSEの802がスローな曲を歌いだし、 誰よりも雄弁にあなただけの忘られぬ日々を語る。
あなたが失くしてしまったものたちは、カクテルグラスの中でひとつ、また一つとよみがえり、静かに淡い光を放ち始める。
スロー・バラードをリクエストしてください。あなたの物語をきかせてください。

営業などのスケジュール

今日は2024年3月19日日曜日
定休日です。

2024年3月
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2024年4月
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2024年5月
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明日から5月末までの予定



いるか喫茶バーの人気カクテルランキング Best10

第1位  1813票      ギムレット/Gimlet       ¥380

ジンベースのスタンダードショート。
ジンとライムジュースの普遍的最高傑作。ダイキリと並んで絶対に間違いのないショートカクテルの代表。
柑橘系,ベースの味重視味でさっぱりの甘さ。シェークで作ります。
アルコール度数は24(高い)。炭酸なし。
  コメント ☆
「ロング・グッドバイ」 レイモンド・チャンドラー著 村上春樹訳 早川書房 という本がある。
この本は、「長いお別れ」というタイトルで、1950年代に清水俊二という人がすでに日本語訳している。
村上春樹は高校生の時にこの本を読んで以来、40年 ・・・ (詳しい全文を読む)

第2位  1632票      ライムライトver.いるか/Lime Light       ¥400

ジンベースのオリジナルショート。
ジンとキュラソーとライムとレモンがそれぞれに最高の持ち味を出す看板カクテル。
柑橘系味でさっぱりの甘さ。シェークで作ります。
アルコール度数は29(高い)。炭酸なし。
  コメント ☆
カウンターのダウンライトの下にきちんとそろえられた 両手。
その左手の指があまりにも自然な形で4本だけ並んでいたとする。
そのわきにはよく冷えた白ワインが似合うだろう。
それもいいけどこのカクテルがあってもいい。
おそらく奇跡的に自然な ・・・ (詳しい全文を読む)

第3位  1569票      ダイキリ       ¥390

ラムベースのスタンダードショート。
地球で最もメジャーなラムベースのカクテル。ラムとライムジュースの比は3:1。
柑橘系,ベースの味重視味でさっぱりの甘さ。シェークで作ります。
アルコール度数は24(高い)。炭酸なし。
  コメント ☆
地球で最もメジャーなラムベースのカクテル。
100年ほど前、米西戦争終結後、キューバはアメリカによってスペインから解放された。
本当の意味での解放であったかは別として、キューバリバーが作られたりして、キューバ万歳!
そういう時代。
キ ・・・ (詳しい全文を読む)

第4位  1556票      エックスワイジー(XYZ)       ¥400

ラムベースのスタンダードショート。
ラム:キュラソー:レモン=4:1:1。これ以上はない。
柑橘系,酸味系味でさっぱりの甘さ。シェークで作ります。
アルコール度数は27(高い)。炭酸なし。
  コメント ☆
ラム好きのためのカクテルとしてはダイキリと並んで最もメジャー。定番だけどオシャレ。
個人的には、女性にはコアントロー、男性にはホワイトキュラソーで作りたい。
アルファベットの最終3文字を名前にしたというのは「これ以上はない」という意味らし ・・・ (詳しい全文を読む)

第5位  1546票      ベスト・オブ・マイ・ラブ       ¥420

ジンベースのオリジナルショート。
これ以上の恋があっただろうか。いや、ない。トロピカルな香りに包まれたカクテルの
味わいにドン・ヘンリーのメロウなヴォーカルが響く。
トロピカル味で甘いの甘さ。シェークで作ります。
アルコール度数は20(高い)。炭酸なし。
  コメント ☆
よく、結婚式でこの歌がBGMとして流された時代があった。しかしこの歌は別れた恋人を思う歌らしい。 (詳しい全文を読む)

第6位  1528票      ラヴァーズロック       ¥430

ウォッカベースのオリジナルロング。
コアントロー、シトロンジェネバー、レモンが織りなす柑橘系シェークロック。
柑橘系味でふつうの甘さ。シェークで作ります。
アルコール度数は26(高い)。炭酸なし。
  コメント ☆
何年か前にシャーデーのアルバムを貸してくれたのは僕より15才ぐらい年下の小娘だった。
ラヴァーズ・ロック。
そういえばこの独特の曲調、聞いたことがある。オシャレなカフェバーでよくかかっていた。
”Lovers”というのは「恋人たち」と訳せるのか ・・・ (詳しい全文を読む)

第7位  1519票      イエスタデイ(Ver.いるか喫茶バー)       ¥380

ジンベースのオリジナルショート。
ギター1本で歌うポールの声が響けば、忘れていたすべての風景がよみがえる。
キャンペーン特価¥380
柑橘系味でさっぱりの甘さ。シェークで作ります。
アルコール度数は25(高い)。炭酸なし。
  コメント ☆
僕の隣の席が空になると、マスターがやってきて彼女のグラスを下げた。そこは初めから空席であったかのように、何も残っていなかった。
 たった1枚の名刺以外。
 名刺には、スタジオ・アディオという会社の名前と住所と電話番号と彼女の名前が書い ・・・ (詳しい全文を読む)

第8位  1488票      ナイトライトver.いるか/Night Lights       ¥400

ラムベースのオリジナルショート。
深まる都会の夜を歌うジェリー・マリガンのバラードに身を任せ、
ラムに柑橘系の香りが最高の夜を演出する
柑橘系味でふつうの甘さ。シェークで作ります。
アルコール度数は29(高い)。炭酸なし。
  コメント ☆
そびえ立つビルの点々とした窓の灯りが 目の前の静かな流れの川面に映し出され
昼の喧騒を洗い流しているようです。
ジェリー・マリガンがつぶやくように奏でるピアノの調べは
夜の深まりを語りかけています。
(詳しい全文を読む)

第9位  1476票      歌は終わりぬ       ¥410

テキーラベースのオリジナルショート。
テキーラにキュラソー、クランベリー、レモンを加えた飲みやすいショート。
柑橘系,ベリー系味でふつうの甘さ。シェークで作ります。
アルコール度数は21(高い)。炭酸なし。
  コメント ☆
今から20年ほども前だろうか、村上春樹の「風の歌を聴け」→
「1973年のピンボール」→「羊をめぐる冒険」と読み進んでいった。
「歌は終わりぬ」という節は「羊をめぐる冒険」の第5章にある。
20代が幕を閉じようとしているときのことを著した ・・・ (詳しい全文を読む)

第10位  1449票      ホワイトレディー       ¥400

ジンベースのスタンダードショート。
定番中の定番、ジン:キュラソー:レモン=2:1:1の吉永小百合さん的清涼感のショート。
柑橘系,酸味系味でさっぱりの甘さ。シェークで作ります。
アルコール度数は24(高い)。炭酸なし。
  コメント ☆
女性向きというより女性に人気がある。もちろん男性が飲んでも良い。むしろ飲んでもらいたい。
ショートカクテルの基本であるスピリッツ:キュラソー:レモン=2:1:1のジンベース。
この比率は個人的には4:1:1までドライにしてもスタンダードへの敬 ・・・ (詳しい全文を読む)


今日(2024年3月19日)の日替わり黒板メニュー  ~ 気まぐれ・本日6:00PM以降限定版 ~



いるか喫茶バーのカクテル・ストーリー


目次

はじめに
第1章 ライム・ライト
第2章 イン・マイ・ライフ
第3章 ハロー・アゲイン
第4章 アイ・ウィル・カムフォート・ユー
第5章 イエスタデイ

はじめに

 僕は、かれこれ30年ほども村上春樹の「風の歌を聴け」、「1973年のピンボール」、「羊をめぐる冒険」という初期の三つの長編を繰り返し読んでいる。いわゆる「僕と鼠」シリーズあるいは青春三部作と呼ばれているものだ。それは、読書というより音楽を聞く行為に近い。お気に入りの曲をレコードが擦り切れるほど(デジタルの時代にこんな表現が通用するのか?)何度も繰り返して聞くように、僕はこれらの3部作を繰り返し読んでいる。
 いるか喫茶バーのオリジナル・カクテルは、それらの3部作を読みながら浮かんでは消えていく何かのイメージを少しずつ形にしていったものだ。一連のオリジナル・カクテル全体を通して、起承転結がはっきりしたようなきちんとした形式の筋書きは存在しない。でも、それぞれのカクテルにまつわる背景のようなものがある。僕はそれらの背景を「いるか喫茶バーのカクテル・ストーリー」と銘打って書き留めて行きたいと思う。第1章はライムライト。最終章は165000。決まっているのはそれだけだ。どれだけの量になるのかわからないが、おそらくいるか喫茶バーが終わるまでずっと、書き続けるだろう…。何のために…?はっきりとしないが、なるべく正直に言うなら、[いろいろなことをを鎮めるために書く。]というようなことだ。鎮火と言うのかな。これから残りの時間の多くは、そうしたことに費やすのが良いのではないかと思う。歳のせいだろう。まだ、人生を完結の方向で考える歳でもないが、もはやどんどん新たな展開を模索する歳でもない。若い頃は、こんなこと考えもしなかった。そんな風に思うのなら「靴箱の中で生きればいいわ。」と考えていたものだ。
 冒頭で書いたように、僕にとって村上春樹の初期の三つの作品を読むのは、慣れ親しんだ曲を聴くのと同じようなことだ。印象派の絵画や音楽に接した時、心の中のある特定のところにスッとしみわたってくるものがあるような気がする。そんな感じだ。例えばドビュッシーのピアノ曲を聴いたとき、何かのイメージがひろがる。絵画的なイメージだ。文学であっても、音楽であっても、絵画であっても、それは方法であって、そうした垣根に関係なく、心のある部分に直接届けられるメッセージを発信する作品がある。芸術的なことはよく知らないが、印象派とか象徴主義とかそういった括りでもない、何だろう、全く個人的な感想だが感覚的には嗅覚に訴えるようなメッセージを発信する作品たちだ。村上春樹の初期の三つの作品は、僕にとってまさにそのような作品だ。僕だけが感じるのかも知れない。もちろん、嗅覚に訴えるといってもそれは象徴的な意味であり、花や果物の香りがするわけではない。例えば、「風の歌を聴け」を読めば、暑い夏の香り、神戸とかそういうところの海の匂いがする、そういったことだ。1973年の香り。二十歳代の香り。遥か彼方に過ぎ去って普段は忘れているけれども確かに記憶のひだの中に残っている匂い。古い昔の何かだ。視覚的に言うなら、蛍が空中ですうっと弧を描いて放つ薄緑の光。手を伸ばせばそこにあるのに、捕まえることのできない不確実な淡い光の筋。それは、スガシカオ風に言うなら、「心のやわらかい場所」にとどいて時には胸を締めつける。物語全体を通して、あるいは一つの章、一つの節、一行の文章、一言の台詞からもそうしたメッセージがとどけられる。三冊の本のどの部分を読んでも、目の前の風景が変化したかのようにある種のそうした香りに包まれるのである。音楽を聴くのと同義であるというのはこのためだ。好きな音楽を聴く時も同じだ。気持ちよく聴ける音楽は、香りや匂いのようなもので自分を含めた場を満たしてくれる。
 昨今、村上作品に関してのガイドブックのようなものが多数出ている。その中には村上作品をダシに儲けようとしている意図があからさまなものもあるように思う。村上氏自身はそのような書籍が自分の管理下におかれていないことを懸念しているらしい。もちろん、わかる気はする。同時にもう少し太っ腹でもいいように思う。芸能人のものまねや有名人の饅頭は、ネタにされる人に対して敬意をはらっているものに関しては許容の範囲があって良いと思う。本物の価値がそれによって損なわれるはずもない。僕が自分で言うのはだめだと知りつつ誰も言ってくれないから言ってしまうけど、ネタにされるうちが花だと思う。価値があるから贋物が出回る。価値のないものは、真似る値打ちがない。「いるか喫茶バー」も「いるかホテル」をダシに儲けていると指摘されるんじゃないかと僕は懸念している。いや、密かに期待している。しかし、それは残念ながらありえない。そのような懸念や期待を抱くのは自意識過剰というものだ。僕はちっぽけな店を秘かにやっているちっぽけなオヤジだ。ノーベル賞候補の人物やその周辺の人がちっぽけな店のちっぽけなオヤジを問題にすることなど考えられないし、目に留まることすらないだろう。それに、僕は村上作品をダシに儲けようと思っているわけではない。現に儲かっていない。所得証明を出してもいい。何年か前にノーベル文学賞が発表される瞬間の店の様子を京都新聞の人が取材に来た。たとえ受賞が決まったとしても特に何もしないと言ったらそれではネタにならないらしく、次の年からは取材されなくなった。さらに、信じてもらえないかもしれないが、僕が「いるか喫茶」をやりたいと思ったのは「羊をめぐる冒険」を読んだ1982年のことである。その頃村上氏はそれほどメジャーな作家ではなかった。だから村上作品をダシに儲けようという発想自体成り立たなかった。「いるか?何それ。」「村上春樹って誰?テニスボーイ?(そりゃ、村上龍だよ。)」そんな感じだ。そんな時代に僕は3部作から滾々とあふれ出す井戸水の水脈を見つけた。そしてそれを自分の中でのものさしにしたいと思った。僕の中でのスタンダード・ナンバーを初期の3部作にしたいと思ったのだ。そして1982年以降今日まで、僕のものさしは全くぶれずにきちんと校正されている。冒頭に書いた「3部作を繰り返し読んでいる。」という作業は、僕の持っているものさしの校正作業でもある。

      2013年3月16日 いるか喫茶バー マスター 高田裕之


 この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです 。(目次へ

第1章 ライム・ライト

 間違いない。今日が梅雨明けだ。僕は気象庁よりも正確に梅雨明けを宣言できる。間違ったためしなんてない。1988年の夏は今日から始まる。昼の蒸し暑さが幾分和らいだ宵の頃、僕はいつもの店に向かった。芝生の庭を横切り、やや重い木のドアを押して中に入った。カウンターの端のスツールに座っている女性が目に入った。彼女の存在は、客席の風景に何の違和感もなく溶け込んでいたし、多くの人はその存在を気にもとめないだろう。特に美人でもなく、派手でもない。しかし、僕は彼女を見た瞬間、胸を丸太で突かれたような激しい衝撃を受けた。同時に、様々な思いが走馬灯のように駆け巡り、やり切れないほどに胸を締め付けた。彼女はカウンターに雑誌を置いていたがその視線は目の前の棚に並べられたグラスやスピリッツやリキュールにぼんやりと注がれていた。僕は、吸い込まれるようにして彼女の横まで歩いて行った。ゆっくりと彼女が振り向いた。彼女の目尻には、わずかにある種の魅力的な皺ができていた。でも、確かにそこに座っているのは彼女だった。
 「やっ、やあ、ひ、久し振り。」
 僕は、彼女との劇的な再会の場面を幾度となく想像してきた。いつか、彼女と会えるかも知れない。それだけのために今日までやってきたと言えばそんな気さえする。もっと素直に、もっとやさしく、もっと強く、もっとカッコ良くなろうとして来た。なのに、なんて間の抜けた言葉しか出ないのだろう。でも、他の言葉は思いつかない。彼女は微笑みながらため息をついて言った。
 「久し振りどころの年数じゃないわよ。私、老けたでしょ。皺ができているってあなたの目が言っているんだけど?」
 「そ、そんな、ことないよ。なっ、なぜここに?」
 僕は、マスターにビールを注文し、彼女の隣の席に腰を下ろした。そして彼女の穏やかな表情を見て幾分落ち着いた。彼女は言った。
 「あなたが私を呼んだのよ。私はあなたに呼ばれれば、いつでもヒョコヒョコ出てくるわ。それにね…、そろそろあなたといろいろなことを話すべき時期が来たと思ったの。」
 彼女が鼠の別荘で突然消えて以来、10年が過ぎた。10年というのは我々を取り巻く状況を全く異なったものするのに十分な時間だ。僕は、日航や東電やそんな大企業が破綻したり、大津波が町全体を飲み込むというようなことを言っているのではない。もちろんそれらの当事者は、10年前と状況が一変しただろう。そうではなく、僕が言いたいのはあらゆる個人にあまねく行われる「時間による打擲」のことだ。それは、静かにそして確実に人々を打ちのめしていく。10年もたてば、もう元に戻ってやり直せるようなことはほとんど無くなってしまう。やり直すにはいろいろな物事が進行し過ぎている。そして、いろいろなものが損なわれてしまった。しかし、同時に僕は彼女を見ていると、昔の映画のワンシーンをもう一度繰り返して見ているようにも思えた。
 カウンターのダウンライトの光の中で、きちんと揃えられた両手。その左手の指は、やはりあまりにも自然な形で4本だけ並んでいる。その脇には白く、わずかに緑色がかった透明なショートカクテルがあった。ダウンライトに照らされてカクテルの表面に散りばめられた氷のかけらがキラキラと輝いている。それはジンベースの「ライム・ライト」というカクテルだ。彼女と、彼女の両手と、その脇に置かれた「ライム・ライト」は奇跡的に自然な取り合わせになっていた。ずっと前に初めて彼女と飲んだ時は、彼女の両手の脇に良く冷えた白ワインがあった。その時と同じように今は「ライム・ライト」がよく似合っていた。彼女の耳はストレート・ミディアムの髪の下に隠れていた。マスターが、こんなにも正確にいつも通りの「ライム・ライト」を出したということは、彼女の耳は彼女がこの店に来てからずっと髪で覆われていたのだ。そして僕は長い時を経た今も、彼女の耳の圧倒的な美しさと力は決して失われず、確かにそこにあるのだと感じた。
 「君は変わっていないね。安心したよ。」
 「あなたも変わっていないわ。」
 フンッと僕は鼻で笑った。
 「何から話せばいいのか、想像もつかないけどね。ともかく何もかも終わってしまったよ。鼠は死んだ。影は奪われた。君さえも突然居なくなった。僕は僕でないような気がするよ。どうして変わっていないように見えるのか不思議だ。」
 彼女はそれに答えず、少し早口で言った。
 「ねえ、ビートルズの、何か曲をかけて。」
 僕は、ビールを飲み干し、ジュークボックスに行って「イエスタデイ」をリクエストした。どうしてビートルズと言われて「イエスタデイ」を選んだか、特に理由はない。ただ、ビートルズの曲リストの一番最後にあったから目についたという事だ。そして、マスターにカクテルの「イン・マイ・ライフ」を注文した。
 ほどなく、ポール・マッカートニーがアコースティック・ギターをつま弾きだすと、彼女は遠くの小さなものを見るようにほんの少し顔を上げて幾分目を細め、髪に隠れた全ての人を黙らせるほど美しい耳で、「イエスタデイ」に聴き入った。彼女の目は、古い昔の光を見ているようだった。BOSEの802はいつものようにクリアでリアルなサウンドを響かせた。まるで、ポールがここに居るみたいだ。
 ポールは彼が中学生の時に母を乳癌で亡くした。Why she had to go? というのは、亡き母を偲んだ言葉だとも言われている。
 もしここでポールが弾き語りをしていて、その最中に彼女が耳を出したらどうなるだろう。おそらくポールでさえも、その瞬間歌うことをやめて固まってしまうだろう。僕が勝手な妄想をしているうちに曲が終わった。昔の曲の優れた点はすぐに終わるということだ。
 「この曲を聴くとね、中学の教室の匂いを思い出すの。中学の時の英語の授業は、ちょっと面白いことをする先生でね、当時流行っていた洋楽をかけることから始まったのよ。おかげで『イエスタデイ』の歌詞は完全に憶えてるわ。」
 「今じゃ『イエスタデイ』は、文部省検定済みの音楽の教科書に載っているらしいよ。」
 「文部省や、アメリカの意向がどうであろうと、ポールのギターと声が聞こえてくると、パッと中学の教室の匂いがたちこめるの。そこがどんな場所でもよ。」
 彼女はそう言って、「ライム・ライト」の中に残りわずかに漂う氷のかけらに目を落とした。そこから一つまた一つと静かに淡く光りだす古い夢を確かめるように。(目次へ

第2章 イン・マイ・ライフ

 シェーカーのリズミカルな音が聞こえ、僕の前に凍ったカクテルグラスが置かれた。「イン・マイ・ライフ」が注がれると、冷霧(冷たい湯気)がグラスのふちからカウンターの上を這っていく。
 「ともかく、二度目の再会に乾杯。」
 彼女はわずかにグラスを持ち上げて、目で乾杯に応えた。そして、「ライム・ライト」を少し飲んだ。
 「ふうん、これ、『ギムレット』と『ホワイト・レディー』のいいところを合わせたようなカクテルね。マティーニなんて、目じゃないわ。」
 僕は、「イン・マイ・ライフ」を半分ほど飲み、ジュークボックスでビートルズの「イン・マイ・ライフ」をリクエストした。
 彼女は流れてきた曲に、かかとで小さくリズムを取り始める…。
 「1970年にこんなふうに出会えれば、私たちはごく当たり前のカップルで居られたかも知れないわね。」
 「1970年?ジェイズ・バーか。18年前。人生の半分くらい前だね。でも、あの日の事は昨日の事みたいによく憶えてるよ。」
 確かに、我々の出会いはごく当たり前の状況じゃなかった。彼女がジェイズ・バーのトイレで酔いつぶれ、僕が一晩介抱した。あくる朝、僕は彼女から最低の男と言われた。
 「僕達はもう取り返しのつかないところまで来てしまったと思うかい?」
 「もう一度やり直せるかって事?私はね、何度でもやり直してきたわ。壊したり、壊されたりしても。取り返しがつくかつかないかは私達じゃなくて、あなただけの問題よ。あなたはいろんなものを失ったと言うけれど、失うことで取り返しがつかなくなるの?また新たに作るとか組み立てることはできないの?」
 言葉とは裏腹に彼女は穏やかな表情で言った。僕は、人生は失う過程だと考えてきた。20歳代の半ば頃、大学ノートに失ったもの、損なわれたもののリストを書いていって、もはやそれが取り返しがつかないほど膨大な量になっていることに気づいた。しかし、彼女は人生を破壊と構築の繰り返しだという。永遠の雪かき作業。何度砕け散っても一つ一つ丁寧に夢のかけらを集めては組み立てる。それが何時壊されるかわからなくても。
 「でもね、どうしても失くすべきでないものがまだいくつか残っている気がするんだ。」
 「私はまだ幼い頃に小指を失くした。1970年に子供を亡くした。それから3年後に、またね、どうしても失くしたくないものを失くしたの。失うものの大きさを考えていたらとても生きて行けないわ。だから、新しく組み立てることを考えるようにしているのよ。どれだけ粉々に壊されてもね。もちろん同じものはできない。損なわれた部分はそのままよ。でも、それを補う別の何かを新たに作ればいいんだって考えているのよ。」
 「僕が言いたいのは、君を失くしてしまいたくないということなんだよ。別の何かではではどうしようもない。」
 イン・マイ・ライフの最後のリフレインが叫んでいた。
 In my life, I love you more
 In my life, I love you more
 「今度君を失くしてしまったら、僕は死ぬまで毎日後悔すると思うんだ。」
 「毎日シェービング・クリームの缶を握りしめて泣くの?」
 「よく知ってるね。」
 「あのねえ、私はあなたが望めば何時でも来るのよ。何度でも。」
 「それなら、どうして突然居なくなってしまったんだい?」
 「あなたが私を必要としなくなったからよ。ずっとそうよ。私はあなたに呼ばれればいつでも来たわ。なのに私があなたを呼んでもあなたは振り向かなかった。何かに夢中だったのかな。私があなたに会うには、あなたに呼ばれるのを待つしかなかったの。でもね、たった一度だけ、私が必死に呼んだらあなたは何とかして会いに来てくれたの。」
 「1973年のことだ。」
 「とても寒い倉庫で、人目を忍んでほんの少しの間しか会えなかったわね。でも、本当にあなたが来てくれてうれしかったわ。」
 「あんな場所でしか会えなかったし、ほとんどろくに君の話も聴けなかった。僕だけが話していたような気がする。」


 「あの後しばらくして、私は手術したのよ。」
 「手術?」
 「全摘出手術。」
 「全摘?」
 「ある器官を全部失ったということ」
 「それは、もしかしてZARDのボーカルの人と同じ…、」
 「そうよ。」
 「若いのに何で…、」
 「20代でそうなっても不思議じゃないみたい。だけど稀かも知れない。」
 僕は、煙草に火をつけた。あれから5年後、我々は羊をめぐる冒険に出たのだ。僕は彼女がそんなにも大変なことになっていたのを全く知らなかった。僕は自分のことに夢中で彼女のことを何も思いやっていなかったことを今更ながら恥じた。僕だけが彼女の痛みを全て理解できるはずだったのに、僕だけが傷付いた彼女にずっと寄り添うことができる資格を持っていたはずなのに…。

 ― ある事をする資格もないのにやるのは愚かだ。
   資格があるのにそれをやらないのはその百倍愚かだ。 ―

 僕は、凍てつくように寒い倉庫で、ほんの少ししか彼女と居ることができなかった。彼女は僕を気遣ってか、何も語らなかった。僕は何も気づかず自分の話だけをして立ち去ってしまったのだ。
 気が付けば、僕の「イン・マイ・ライフ」も彼女の「ライム・ライト」も飲み干されていた。僕はスタンダードの「ホワイト・レディー」を二つ注文した。何を話せばいいのかわからなかった。そして我々はホワイト・レディーを飲み切るまで黙っていた。僕の灰皿には煙草が5本、もみ消されていた。頭の中に凍てついた倉庫の場面が現れた。僕は自分のことをたまらなく愚かだと思った。彼女のことをたまらなく愛おしいいと思った。
 「何を今更と思うかもしれないけど、本当に悪かったよ。僕は、君の話を何も聴かなかったし、君に何もしてあげられなかった。」
 「いいのよ。あなたはあの時確かに私の呼びかけに応えて来てくれたんだから。あなた以外の誰も、私が叫んでも振り向いてもくれなかったわ。あなたは小指を失くしたときの話も聴いてくれた。子供を亡くしたときも海辺の倉庫の陰でずっと私に寄り添って肩を抱いてくれた。そしてあの凍てついた倉庫にも、ものすごい犠牲を払ってともかく私に会いに来てくれた。それで十分よ。」
 彼女はあくまで穏やかにあの時の事を振り返るようにして言った。僕はそんな彼女の表情にいくらか救われた。彼女は僕にこれ以上後悔することが無意味であると言っているようにも取れた。



 「一つ聞いてもいいかい?」
 「何?」
 「あの時、僕はプレイするべきだったのかな?」
 「わからない。でも私は、あなたにプレイしてもらいたかったからあなたを呼んだのよ。」
 「もし、プレイしていたら、165000点を上回ることができただろうか。」
 「もちろん。軽く百万点を超えていたはずね。」
 「信じられないね。」
 「あなたが信じなくても私はそう思う。でもね、もしそうなっていたら、こんなふうに会うこともなかったと思う。羊をめぐる冒険さえも、できなかったと思うの。」
 「なぜ?」
 「燃え尽きるということよ。跡形もなく。逆に言えば今は未だ燃え尽きていないから続きがあるのかな。」
 「焼けボックリに火が点くということもあるからね。」
 「まさか、そんなふうに激しく燃えることはもうないわ。これからは、細く長くよ。」
 「ねえ、あの時僕がプレイしていたら、どうして百万点を超えるって言い切れるんだい?」
 「今だから言うけど、私はある程度ゲームをコントロールできるのよ。トラップやトランスファーみたいなフリッパーの繊細な動きはね、プレイヤーと呼吸を合わせなければできないの。逆に、呼吸をピッタリ合わせれば比較的簡単にできるものよ。あの日、あなたがプレイしたら、その瞬間から私はあなたにピッタリ呼吸を合わせてあなたと一体化するつもりだったの。そして、壊れるまでエキストラボールを出し続け、死ぬまでリプレイに応えるつもりだったわ。」
 「死ぬまで?」
 「そうよ、死ぬまで。」
 「まいったね。僕の方が先に死ぬんじゃないか。」
 「また中学の話だけど…、卒業アルバムに先生からの贈る言葉が書いてあって、」
 「『夢と希望を持ち続けよ。』とか『努力と継続は力なり。』とか。」
 「そうよ。その中で若い体育の女の先生の言葉は今も覚えているわ。
   たはむれに 恋はすまじ
   女が惚れたら
   命懸け
中学の卒業生に贈る言葉とは思えないでしょ。でもね、この言葉は女子の間で支持されたし、軟派な男子たちを震え上がらせたわ。とっても可愛らしい先生で男子からもアイドルのように慕われていたんだけど。」
 あの日、僕は165000という僕と彼女のベストスコアを汚したくなかった。165000という数字は、僕だけが彼女を最も理解し、彼女だけが最も僕を理解していた事の象徴であり、僕と彼女の生きていた時のあかしだった。
 そして僕は、あの日にプレイすれば、もう2度と彼女に会えなくなるのを予感していたのかも知れなかった。
 「あの時、プレイしなくて良かったよ。」
 「少なくとも、こうして向き合って、お酒を飲むことはないと思うわ。」
 「そうだね。何かお酒を頼もう。まだいいだろ。」
 「うん、もう少し。今度はロングね。」
 「僕はまだショートで行く。」
 僕は、バック・ヤードに引っ込んでいるマスターを呼んで、ロングの「ソルティー・ドッグ」とショートの「ハロー・アゲイン」を注文した。そして、ジュークボックスで、My Little Lover の Hello, Again ~昔からある場所~ をリクエストした。
イントロのギターが誇らしく響きだす。(目次へ

第3章 ハロー・アゲイン

 「My Little Lover のことは知らないけどね、この曲は特別なんだ。何故だかこの曲を聴くたびに君を思い出していたよ。君がすぐそばに居るように思えたんだ。何でだろ。」
 彼女はしばらく曲に耳を傾けているようだった。やがて、カクテルの「ハロー・アゲイン」が僕の前に出された。僕は「ハロー・アゲイン」を一口飲んだ。ブランデーベースで、オレンジの甘い香りが漂う、どこか懐かしい気持ちになるカクテルだ。後味に、ほのかなミントの爽やかさが残る。
 マスターは、「ソルティー・ドッグ」のスノー・スタイルのグラスに氷を入れるのが難しくて手間取っている。
 「少しもらっていい?」
 「もちろん、好きなだけ。」
 彼女は「ハロー・アゲイン」のグラスの脚を持ち、グラスのふちにそっと唇をつけて少し飲んだ。そしてグラスにわずかについた口紅を、指で拭いて僕の前に戻した。その一連の動作は春の小川の流れのように滑らかで自然だった。
 特に際立った美人というわけではない。どこにでも居そうな目立たない女の人だ。従って、僕にとって彼女が特別である事を第三者に納得させることは極めて困難だ。一言では到底説明できない。だから、僕はこの「いるか喫茶バーのカクテルストーリー」でゆっくり語りたいと思う。165000の最終章まで全てを語り終えれば、彼女がなぜ特別なのかを多くの人にわかってもらえると信じて。
 「ふうん、なるほどね。昔からあるような、でも何か新しいような感じがする。」
 Hello, again a feeling heart
 Hello, again my old dear place
 曲の最後のリフレインだ。
 「私にはこの曲は、難解ね。限界を知るために生きてるわけじゃないとか、波のかなたにちゃんと果てを感じられるとか、よくわからないわ。」
 「そんなの、僕もわからないさ。そんなことはいいんだよ。世の中わからないことの方が多いさ。問題は、わからないのにわかったような格好で話を進めることだよ。そうなると身動きできなくなっていく。泥沼さ。」
 僕は、この曲を聴くたびに彼女を思い出したのだが、今日は彼女を見ていてこの曲を思い出した。彼女を見ていると、昔からそっと大事に残されている心の中の懐かしい場所の匂いがした。その匂いは彼女以外の誰を見ても感じられないものだ。僕にとって彼女が特別なのはそういう類のことなのだ。客観的には説明できない。
 彼女の前にソルティー・ドッグが置かれた。
 そのとき、僕は、突然胸が締め付けられるようなデジャブを感じた。いや、これは確かにあったことだ。僕は3代目のジェイズ・バーに行ってジェイと話した後、埋立地の中にあるかつての防波堤でビールを2本飲み、空き缶を投げて警備員に注意された。あくる日、彼女に会った。そして、彼女は丁度今のように「ソルティー・ドッグ」を飲みながら、波の音について短い話を語った。もう、海はないけれども波の音は時々聞こえるような気がする…。彼女は語った。多くの物事は終わってしまった。しかし、いくつかの何かがまだ未完了の状態でそこにある。それらが手を差し伸べられる時を待っている。いつかその時が来るのかも知れない。来ないのかも知れない。しかし、手を差し伸べられる時を待っているいくつかの何かのために、我々はは冒険を続けるのだ。
 「波の音はまだ聞こえるような気がするかい?」
 「そうね、あまりにも昔のことだから…。」
 「僕には聞こえる気がするよ。防波堤の上の潮の匂いだって感じられる。」
 「…そうね。何もかもが終わって新しくなったわけじゃないわ。ねえ、あの防波堤の隙間に流れていたきれいな小川、まだあるのかしら。」
 「今から行って確かめようか。」
 「裸足で足を浸けたいの。」
 「車で、2時間もあれば行けるさ。行こうぜ。」
 「そうね、でも行って小川が無かったらどうするの?」
 「芦屋市役所の土地改良課の末松さんに、どうしても必要な小川だからもう一度作ってくれって言う。」
 「末松さん?」
 「課長さんだよ。彼は僕の話をまともに聞いてくれるんだ。」
 「なぜ、小川が必要なんですかって訊かれたら?」
 「『僕のガール・フレンドが裸足で足を浸けたいって言っているんです。彼女は僕にとって本当に特別な人なんです。彼女の望みは僕が全部叶えるべきなんです。僕には彼女の望みを叶える責任と資格があるんです。だからお願いです、作ってください。』って言う。」
 彼女は目を細めてクスクス笑った。
 「あいかわらずね…。」
 「君の笑った顔が見られて良かったよ。」
 「末松さんが駄目ですって言ったらどうするの?」
 「部長の吉松さんに頼むよ。」
 「それも駄目なら?」
 「僕がスコップで掘るさ。君にも手伝ってもらうけどね。力仕事は僕がやる。君は渉外を担当してほしいんだ。」
 「何よ。渉外って。」
 「外部の人たちとの交渉さ。『何をしているんだ。』『許可証はあるのか?』『違法だぞ』そういった質問や脅しにテキパキと対処して欲しいんだ。僕は肉体労働に専念するから。」
 「それができれば鬼に金棒ね。」
 「全くね。何だってできる。」
 「何がしたい?」
 「発電所を作るんだ。」
 「発電所?」
 「電気が足りないとかで、節電、節電ってうるさいけど、発電すれば済むことだよ。」
 「どんな発電所?太陽電池とか、風力?」
 「全国5000箇所に人力発電所を作る。」
 「それで、どのくらい発電できるの?」
 「10万KWぐらいだ。原発1基にもならないけどね。10W発電してくれる人を1000万人動員すればいいだけだよ。」
 「ふうん。どうやって?」
 「簡単さ。全国にスポーツジムやフィットネス・クラブなどのスポーツ施設は民営だけでも5000箇所あるんだ。会員数は400万人。例えばエアロバイクの負荷を発電機にすれば最大50Wの発電ができる。ジムのあらゆるマシンの負荷を発電機にすることは簡単だ。」
 「エアロビのスタジオは?プールは?」
 「スタジオの床には圧力で発電する素子を埋め込む。人が飛んだり跳ねたりすればそのたびに発電できる。プールは円を描くようにみんな同じ方向に泳いだり歩いたりするんだ。中心部分に渦で回転するような水車を置いてそれに発電機を取り付ける。」
 「そうね。いい考えかも知れない。でも400万人よ。1000万人にはあと600万人足りない。」
 「会費を無料にすればすぐに集まるさ。メタボやダイエットなんかで河川敷を走ったり歩いたりしている人はそこらにいっぱい居る。そういう人たちはジムやフィットネスが無料で利用できるとなれば喜んで来てくれるよ。」
 「問題はシステムね。」
 「システム?」
 「発電所は言わば電気の製造工場、つまりファクトリーでしかない。ファクトリーが機能するにはシステムとの連携支援が必要なの。システムというのは、政治、官僚、業界そして教育の癒着によって出来上がっている巨大な構造物よ。私たちは今、原発を含めた巨大なシステムの中に居る。そこから抜け出すのは簡単じゃないわ。」
 「村上春樹さんが核に対する『ノー!』を言い続けるべきだったってスピーチしたけどそれでもダメかなあ。」
 「そうね。もしかしたら、ダメじゃないかも知れない。」
 「よし。その時が来たら、我々は全国に人力発電所を作ろう。もしかしたらその時は今かも知れないよ。僕は君と一緒にやればきっとうまくいくと思うんだ。」
 「あなたは10年前と少しも変わっていないわ。」
 彼女は目を三角にして笑った。久し振りだった。こんなふうに楽しそうに僕に向かって笑いかけてくれる女性を見るのは。燃えないゴミの処理にうんざりして困っているような顔には毎日出会うというのに。(目次へ

第4章 アイ・ウィル・カムフォート・ユー

 「また一緒にやろうよ。巨大なシステムに立ち向かっていく冒険に出よう。我々にはまだやり残している未完了のことがいっぱいあるはずだよ。」
 「あなたがそう言ってくれることはうれしいわ。私があなたを好きなのはそういうことなの。私が持っていないものか、失くしたものか、そういうものをあなたはまだ諦めずに持っている。幼い頃から集めていたきれいなビー玉を失くさずにいるようにね。」
 彼女はいくらか寂しそうに言った。
 「もう一度、冒険に出られればどれだけ楽しいかと思うわ。」
 「どうして無理なんだ?気分が良くて、何が悪い?」
 「急がないで。」
 彼女は右手を伸ばして僕の腕に少し触れた。
 「無理だとは言ってないわ。でもね、10年経っても消えない傷はあるのよ…。」
 「何か、やさしい味のカクテルがほしいな。」
 僕は、「アイ・ウィル・カムフォート・ユー」を二つ注文した。マスターは大き目のシェーカーに2杯分の材料を入れ、かなり大げさにハードシェークした後、氷の入った二つのオールド・ファッションド・グラスを仲良さそうに並べてシェーカーの中身を等分に注いだ。最後にシェーカーを逆さまに小刻みに振ってクリーミーな泡を注ぎ切り、何か悦に入っているようだった。ジュークボックスからはサイモンとガーファンクルの「明日に架ける橋」のピアノの前奏が流れてきた。
 「僕はまだ、君が『羊をめぐる冒険』の途中で急に消えた理由を聞いていないような気がするんだ。」
 「言ったでしょ。あなたが私を必要としなくなったからよ。」
 「僕は、君がそばに居てくれて、スケジュールの調整や物品の調達やその他のいろいろな面倒なことをきちんとやってくれたからあの冒険ができたんだと思っている。僕は冒険の事だけを考えていればよかったんだ。僕はあの後もずっと君と組んで冒険を続けたかったんだ。君を必要としなくなったなんて一度も思ってない。」
 「私があなたを理解しているのと同じように、当然あなたも私のことを誰よりも理解してくれていると思ってた。でもそれは私の幻想だったの。」
 「幻想?…あの時、僕は君に何か悪いことを言っただろうか。」
 「違うわ。言わなかったのよ。」
 「言わなかった?」
 「ねえ、私が消える前に、そう冬を迎える頃だったわ、あなたのお父さんの別荘で『これからどうするつもり?』ってあなたに聞いたのを覚えてる?」
 「覚えているさ。僕は『このままでいい。』って言ったんだ。それ以外のことは考えられなかったしね。」
 「そうよ。それでも私が『ずっとこのままが続くわけないでしょ?』って言った。『その先のことを少しは考えてほしいの。』とあなたにつめ寄った。そしたらあなたはずっと黙り込んでしまった。何も言わなかった。何も言ってくれなかった。あなたは機嫌が悪くなるとその辺に散らかっている遊び道具を全部しまい込んで黙ってしまうの。でも、あんなに長くて重苦しい沈黙はそれまでなかった。黙って10分以上向き合っていたわ。10分以上よ。」
 「思い出したよ。」
 「あなたは自分の夢を追う事に夢中で私のことは考えてなかったんだってわかったの。」
 「羊男にも同じ事を言われたよ。『あんたは自分のことしか考えていない』『あんたが女を混乱させた。』『とてもいけない。』そう言われた。そして、もう2度と君に会えないと言われた。」
 「私も羊男さんに言われた。『ここに居るべきじゃない。』ってね。そして、すぐに山を下りる事にしたの。冬が近づく寒い夜にたった一人でよ。それがどういう事だかわかる?」
 「まさか何も言わずに、書置きもなしに、突然君が居なくなるとは思わなかった。」
 「私はあなたのことを誰にも負けないほど好きだったし、今も好きよ。何度も言うけどあなたのことを誰にも負けないほど理解していたし、今も理解している。これは誰にも否定させない。だからあなたの前から消えたの。確かに私はあなたのそばに居るべきじゃないと思ったのよ。」


彼女はいるかホテルの支配人との昼食について語る

 「あの時、別荘からいるかホテルまで、真っ暗な山道を下ってバスや電車に乗って行った道程は何も覚えていないけど、いるかホテルに着いたのは、あくる日の昼前だったわ。フロントでいるかホテルの支配人さんに、『私は先に帰ります。』って言ったの。ごく普通にね。でも、気が付くとフロントのカウンターに涙がポタポタと落ちていた。私は慌てて手で拭いたんだけど、あとからあとから止め処なく涙が落ちてくるの。支配人さんがびっくりして『ともかく昼食をご一緒しましょう。』と言ってくれた。そして、ご馳走してもらったの。」
 「僕はひどく君を傷付けてしまった。」
 「私は、あなたに裏切られたとかで恨んだりはしていない。本当よ。でももちろん、あなたにさえ出会わなかったらあんなに傷付くことはなかった。でもこれは、全部自分で選んだことだから…。」
 「確かに僕は、自分の事しか考えていなかった。いるかホテルの支配人でさえ君の涙に気づいてそれを放っておけなかったのに。」
 「支配人さんは、お刺身や、野菜の天ぷらや、鯛めしやちょっと変わったお漬物とか私がしばらく口にしなかったようなものをいろいろ出してくれたわ。そして、お皿が来るたびに『どうですか、大丈夫ですか。』って聞くの。私は時々笑って「おいしいです。」って答えた。そのほかにも私はごく普通の表情で一般的な答えを返していたと思う。でもね、普通じゃなかったのは、出されたお料理にも、テーブルにも所かまわず夕立みたいに私の涙が落ち続けていたということよ。」
 彼女は「アイ・ウィル・カムフォート・ユー」をゆっくり飲んで一息ついた。僕は何を言えばいいのか見当も付かなかった。「明日に架ける橋」のフレーズが聞こえてくる。

 以下 Bridge Over Troubled Water P. Simon, 1969 より引用

 When you're down and out
 When you're on the street
 When evening falls so hard
 I will comfort you

 引用以上

 この歌が日本でヒットしたのは、丁度彼女と出会った頃だ。そして5年後、暗闇を彷徨うように去って行った彼女にこの歌のようなことをしてあげるには僕はあまりに未熟だった。あまりにも幼い少年の心しか持っていなかった。
 「最後にいるかホテルの支配人さんは、ショートカクテルのギムレットを出してくれた。そして言ったの。『このカクテルは、長いお別れという本で主人公とその友人が再会するときに飲んだカクテルです。このたびのお別れは長いお別れになるかも知れませんが、いつか必ず再会できますよ。』私は、頷いて、いるかホテルを後にした。」
 「その再会まで10年かかった。長いお別れだった。」
 「私はね、もう2度とあなたに呼ばれることはないと思っていたの。だって他ならぬ羊男さんに『ここに居るべきじゃない。』って言われたんだから。」
 「なぜ羊男の一言だけで君は行動を決めたんだい?」
 「当たり前でしょ。彼はあなた自身よ。」
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第5章 イエスタデイ

 「僕自身?」
 「そうよ。鼠さんがあなたと話すために羊の着ぐるみを着て現れたのが羊男さんでしょ。私は鼠さんに『ここに居るべきじゃない。』って追い出されたの。そして、鼠さんは少年の心を持ったあなた自身よ。私はそう思っているの。だから、鼠さんに言われたということは私にとって、あなたに言われたのと同じことなのよ。」
 彼女が僕のことを誰にも負けないほど理解していると言った意味は、そういうことなのか。つまり、僕と鼠は同一人物であるということなのか。僕と鼠は18歳の頃からジェイズバーでビールを飲んできた。1973年に鼠が引退宣言をしてから、僕は彼と会っていない。そして会わず仕舞いで1978年に鼠は死んだ。事実を追えば別人だ。しかし、別荘で彼女が見たという羊男に扮した鼠は、僕自身だったのかも知れない。いや、確かに僕自身だったのだろう。やはり彼女は僕が自分について理解しているよりも、もっと僕を理解していたのだ。自分のこともよくわかっていない人間が、どうして他人を理解できるだろうか。僕には彼女を理解する資格さえない。僕は、他人(ひと)の事を考える前に自分の胸に手を当てて、自分の事を考えるべきだ。しかし同時に羊男が言ったように僕は『自分のことしか考えていない』人間でもある。僕は今、彼女に何ができるだろう。
 「いるかホテルを出て、街にもどってから君はどうしていたんだい?」
 「とにかく自分を変えようと思ったの。自分は変わるんだって言い聞かせたの。そのために、あなたに関係するものは全部捨てたわ。何もかも。煙草でさえもよ。」
 「煙草?」
 「煙草はあなたに結びついてるの。」
 「煙草は簡単にやめられないだろ。」
 「フンッ、そんなこと、大した事じゃない。」
 「仕事は?」
 「耳のモデルはやめたわ。もちろんコール・ガールもね。冒険に出る前に勤めていた出版社の関係の、写真スタジオの仕事をしてるの。もちろんモデルじゃなくまあ、営業や簡単な事務や雑用。十人ほどの会社だから何でもやるのよ。仕事についてはとにかく真面目にしていたから、正社員にしてもらった。おかげでとても忙しくなった。その上、フィットネスやジムにも通っているから家に帰って一通りの家事をすればあとは寝るだけ。ぼうっとする暇なんて全くない。そういう暇を無くしたの。意識的にね。」
 「耳は一度も出していないのかい?」
 「出せるわけないでしょ。世の中の誰も私の耳のことなんて知らないわ。だから私は、あまりパッとしないただのOLに変わったのよ。」
 「僕には君が変わったようには見えないよ。」
 僕は今日彼女に会った時に言った言葉を繰り返した。その時、彼女はいくらか顔を伏せて目をしばたたいた。そして、消え入りそうに小さな声で話した。
 「当たり前でしょう?本当はね、私の身体の真ん中にとてつもなく大きな穴が空いているだけで何も変わってなんかいないのよ。ずっとよ。でも、そんなこと考えていても何もできないし、どこにも行けないじゃない?だから私は変わるためのことを必死でやったのよ。少しでも穴を埋めるためにね。でも、そんな事できはしない。わかるでしょ?考えてみて。私はあの時まで全部あなたを中心に回っていたのよ。ねえ、教えてよ。どうやって?どうやったら変われるの?」
 10年振りに会う彼女のことを、僕はもっとよく考えるべきだった。
 「悪かったよ。」
 「多分ね。」
 同じ言葉であっても、2時間前と今とでは全く意味が違ってくる。僕は今日、彼女と何を話していたのかを考えて言葉を選ぶべきだった。そういうことができない人間を総称して、デリカシーが無い奴と総称できる。僕は、その括りに入る人間であると思う。何時間か僕と話をした人々の多くは怒って僕から去っていく。その原因のほとんどは僕の側にある。
 「私そろそろ、帰る。」
 「怒った?」
 「いまさら怒っても仕方ないでしょ。馬鹿らしくて怒る気もしないわ。」
 「また会いたいんだ、だから電話番号を教えてくれないか?」
 「いいわよ。」
 彼女は明るく装い、バッグから自分の名刺を取り出し、個人の電話の番号を書いて僕の前に置いた。そして、千円札を何枚か出した。
 「いるわけないだろ。奢らせてくれよ。」
 「そうね、ありがとう。ごちそうさま。」
 彼女はお金をしまった。
 「僕は、まだまだもっと君と話しをしたいと思っているんだ。また会えるよね。」
 「私はあなたに呼ばれれば、いつでもヒョコヒョコ出てくるわ。さっきも言ったようにね。」
 彼女が席を立ち、そして足早に店を後にした。
僕の隣の席が空になると、マスターがやってきて彼女のグラスを下げた。そこは初めから空席であったかのように、何も残っていなかった。
 たった1枚の名刺以外。
 名刺には、スタジオ・アディオという会社の名前と住所と電話番号と彼女の名前が書いてあった。そして、手書きで携帯の電話番号が書いてあった。
 1970年。彼女を初めて車で送った時、彼女は僕の車のバックミラーの後ろに千円札をねじ込んで行った。今日、彼女は出しかけた千円札をしまった。僕は、もう一度彼女との会話を思い出した。
 彼女は人生を破壊と構築の繰り返しだと言い、たとえ何かが損なわれても、また組み立てるべきだと言った。自分は変わるんだと言い聞かせたと言った。同時に自分の身体の真ん中には大きな穴が開いたままになっているとも言った。
 そして、その大きな穴を空けたのは僕だった。彼女に何も言えなかった事で、僕は彼女の身体の真ん中に大きな穴を空けてしまった。
 僕は、彼女が今日最初に語ってくれた「イエスタデイ」についての短い話を思い出した。「イエスタデイ」は彼女に中学の教室の匂いを運んでくる曲だ。中学時代の彼女の身体の真ん中には大きな穴なんて空いているはずもない。僕は、マスターに「イエスタデイ」というカクテルはあるか?と聞いた。マスターは少し首をかしげたが、やがてジンと数種類のリキュールをシェークして薄い水色のショートカクテルを出した。僕はジュークボックスで、少し前にリクエストした「イエスタデイ」をもう一度かけた。

 以下 Yesterday John Lennon & Paul McCartney, 1965 より引用

I said something wrong
Now I long for yesterday
Yesterday love was such an easy game to play
Now I need a place to hide away
Oh I believe in yesterday

 引用以上

 ポールの歌が響く。
 僕が彼女を必要としていないから消えたのだと彼女は言った。そして、彼女は僕が呼べばいつでも来ると言った。名刺に書かれた電話番号に電話をかければ彼女と話せるはずだ。僕は今、彼女を必要としていると思う。彼女と話したいと思う。それなら、僕は名刺に書かれた電話番号に電話をかければ済むことだ。しかし、今の僕にその資格というものがあるのか?以前の僕にはその資格があったはずだ。しかし何もできなかった。何もできないことで彼女を傷付けた。今の僕は彼女に何かできるのか?何もできないくせに、わざわざ来させてどうするんだ?また傷付けるだけじゃないのか?あるいは資格などということにこだわっても仕方ないのか?
 答のないさまざまな疑問が浮かんでは消えた。こんな時、鼠が居れば答は簡単に出せたはずなのに。
 ― 第6章何かにつづく ―  (目次へ



 ※「イエスタデイ」というカクテルは未だ正式にいるか喫茶バーのメニューにアップしておりませんがご注文がございましたらお申し付けください。こういう状況で飲むカクテルなんて良くないかも知れませんが、中学の教室の匂いを運んでくるようなカクテルです。「スター・クロスト・ラヴァーズ」をジンベースに変えたようなレシピのショートカクテルです。ただし、スノー・スタイルではありません。お値段は、¥380(キャンペーン特価)です。

 イエスタデイ(Ver.いるか喫茶バー カクテルレシピ)
 ジン 40cc
 ホワイトキュラソー 5cc
 ブルーキュラソー 1tsp
 シトロンジェネバー 7.5cc
 レモンジュース 5cc
 以上をシェークして冷えたカクテルグラスに注ぐ

 実は、イエスタデイというカクテルはスタンダードで存在します。
 ビョルグ リティッヒ氏の創作で、1967年 デンマーク バーテンダー協会カクテルコンペティションの優勝作品です。

 イエスタデイ(スタンダード カクテルレシピ)
 ジン 40cc
 オレンジキュラソー 10cc
 ライムジュース 10cc
 カンパリ 1dash








 「」
 「」
 







 

   
1970年に時を共にした女の子。
長い時を経て、僕は再び彼女に会うことに決めた。
そのためのあらゆる手間を厭わなかった。
そして、何とか彼女との再会の場所にたどり着いた。
僕はかつての「生きていた」時をここで確認した。
しかしこの再会から新たに何かが始まるわけではなかった。
手をのばせばそこにあるのに、つかまえてしまえばそれを
汚してしまうような、淡い蛍の光。
そのようなかつての「生きていた」時の存在を僕は確認する。そのことにとどまった。
でもそれは、確かにそこに在った。
この再会はむしろ―
歌が終わり、それでも鳴り続けるメロディーのリフレインがフェード・アウトするような、
いわば完結を示唆する再会だった。
だから、そうして僕はまたこの場所をあとにして、日常に戻った。

凍てつくような倉庫でしか実現できなかった切な過ぎる再会。
それでも、僕と彼女が長い時を経てなお共有できたある種の暖かさは、
古い光のようだった。
多くの物事が完結し、終わり、あるいは損なわれ、そして埋もれていっても
僕はこれまでより短いであろう残りの人生を、この光と共に歩むだろう。


Remarks

いるか喫茶バーには、コーヒーとカクテルと、職場でも、家でも、車の中でもない、ささやかな個人的空間と
ゆっくり流れる音楽と時間が、あなたのために用意されています。

全18席 (テーブル2名様席×5、カウンター2名様席×3)です。
当店は、お一人様、お二人様でゆったりと静かにお寛ぎいただける空間を大切にしております。
∴ 3名様以上は別々のテーブルになりますし、3名様以上のご利用には…
  全然向いておりません。(団体様でのご利用は定休日の貸し切りでお願いします。普段は固くお断りします。)
∴ お子様連れでのご利用にも向いておりません。(バー・タイムは、お子様連れでのご利用は … 無理です。)

サービス料・チャージは一切ありません。
∴ 接待は全く何もありません。    でも… 、スローな音楽があります。
  つまり、かまってほしくない人のための店です。

昨日:0103  今日:0086  合計:00048571  Since 2001

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