「走ることについて語るときに僕の語ること」  マスター  2007-10-26 16:59:00  No.412

村上春樹の本を買うのは久しぶりだ。
「走ることについて語るときに僕の語ること」文芸春秋
を読んでみたくなったので買った。
彼も数年で還暦を迎えるわけだし、そろそろ自分を語ってみたくなったのだろう。
毎年ノーベル文学賞候補みたいに取沙汰される人だが自分の才能については凡庸でさえあると言っている。だから走る必要があるということだ。
文学作品は泉のように滾々といつまでもどんどん湧き出るのではなく、
地道に採掘作業を繰り返して、新しい水脈を探していく作業が必要で、そうした肉体労働が作品を生み出す基礎になると彼は語る。
少しでも長く、多くの水をくみ出すために日々ストイックなまでに自分に課題を与えてこなしていく。
それは長距離ランナーのスタイルだと。

「風の歌を聴け」と「1973年のピンボール」は彼が千駄ヶ谷で
ジャズ・バーを経営しながらこま細切れの時間で書いたものだ。
そのとき彼は最初の水脈を掘り当てた。
そしてその水脈を全力でくみ上げたのが「羊をめぐる冒険」だと思う。
この長編を書くために、彼は店を閉めた。

ここまでが彼の発見した最初の水脈であると思う。
僕はこの3作品に多大な影響を受けているし、何度読み返しても新しい発見があったり、忘れかけていたことを思い出させてくれたりして、飽きることがない。「羊をめぐる冒険」にはすさまじいエネルギーが注ぎ込まれていると思う。

「羊をめぐる冒険」を書き終えてからほどなく彼は走り出した。
新しい水脈を求めて長距離ランナーのスタイルをとったのだ。
毎日60本吸ってた煙草もやめた。
それ以降の彼のストイックな生活はとても真似のできるもんじゃない。

今でも毎日平均10kmのランニングをこなし、冬のフルマラソン大会と夏のトライアスロン大会に出場する。
それは長く小説を書いていくために不可欠なことであると彼は語る。

感心するけど、真似できない。

影響は受けるけど無理。

昨日の朝、開店前に10km走った。
家から高野川の土手を下がり、鴨川の土手を下がり、三条大橋まで下がってもどってくる。1時間15分ほどもかかってぼろぼろになった。
走り終わった後の煙草がうまかった。

今日は雨なのでランニングは中止。少しほっとしている。


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