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ベース : ジン
グラス : カクテルグラス
飲み切るべき時間 : ショート
炭酸 : なし
普遍性? : オリジナル
味の傾向 : 柑橘系
甘さ : さっぱり
色の傾向 : 青,薄い色,透明
作り方 : シェーク
度数 : 25度(高い)
その他 : オシャレ,物語がある
時と場合 : どんな時もOK,いつの季節でもOK
何か特別な状況 : としては、昔を思い出して旧い夢を読みたいような飲めばいいように思われる。
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コメント ☆
僕の隣の席が空になると、マスターがやってきて彼女のグラスを下げた。そこは初めから空席であったかのように、何も残っていなかった。
たった1枚の名刺以外。
名刺には、スタジオ・アディオという会社の名前と住所と電話番号と彼女の名前が書いてあった。そして、手書きで携帯の電話番号が書いてあった。
1970年。彼女を初めて車で送った時、彼女は僕の車のバックミラーの後ろに千円札をねじ込んで行った。今日、彼女は出しかけた千円札をしまった。僕は、もう一度彼女との会話を思い出した。
彼女は人生を破壊と構築の繰り返しだと言い、たとえ何かが損なわれても、また組み立てるべきだと言った。自分は変わるんだと言い聞かせたと言った。同時に自分の身体の真ん中には大きな穴が開いたままになっているとも言った。
そして、その大きな穴を空けたのは僕だった。彼女に何も言えなかった事で、僕は彼女の身体の真ん中に大きな穴を空けてしまった。
僕は、彼女が今日最初に語ってくれた「イエスタデイ」についての短い話を思い出した。「イエスタデイ」は彼女に中学の教室の匂いを運んでくる曲だ。中学時代の彼女の身体の真ん中には大きな穴なんて空いているはずもない。僕は、マスターに「イエスタデイ」というカクテルはあるか?と聞いた。マスターは少し首をかしげたが、やがてジンと数種類のリキュールをシェークして薄い水色のショートカクテルを出した。僕はジュークボックスで、少し前にリクエストした「イエスタデイ」をもう一度かけた。
以下 Yesterday John Lennon & Paul McCartney, 1965 より引用
I said something wrong
Now I long for yesterday
Yesterday love was such an easy game to play
Now I need a place to hide away
Oh I believe in yesterday
引用以上
ポールの歌が響く。
僕が彼女を必要としていないから消えたのだと彼女は言った。そして、彼女は僕が呼べばいつでも来ると言った。名刺に書かれた電話番号に電話をかければ彼女と話せるはずだ。僕は今、彼女を必要としていると思う。彼女と話したいと思う。それなら、僕は名刺に書かれた電話番号に電話をかければ済むことだ。しかし、今の僕にその資格というものがあるのか?以前の僕にはその資格があったはずだ。しかし何もできなかった。何もできないことで彼女を傷付けた。今の僕は彼女に何かできるのか?何もできないくせに、わざわざ来させてどうするんだ?また傷付けるだけじゃないのか?あるいは資格などということにこだわっても仕方ないのか?
答のないさまざまな疑問が浮かんでは消えた。こんな時、鼠が居れば答は簡単に出せたはずなのに。
― 第6章何かにつづく ― (目次へ)
※「イエスタデイ」というカクテルは未だ正式にいるか喫茶バーのメニューにアップしておりませんがご注文がございましたらお申し付けください。こういう状況で飲むカクテルなんて良くないかも知れませんが、中学の教室の匂いを運んでくるようなカクテルです。「スター・クロスト・ラヴァーズ」をジンベースに変えたようなレシピのショートカクテルです。ただし、スノー・スタイルではありません。お値段は、¥380(キャンペーン特価)です。
イエスタデイ(Ver.いるか喫茶バー カクテルレシピ)
ジン 40cc
ホワイトキュラソー 5cc
ブルーキュラソー 1dash
シトロンジェネバー 7cc
レモンジュース 7cc
以上をシェークして冷えたカクテルグラスに注ぐ
実は、イエスタデイというカクテルはスタンダードで存在します。
ビョルグ リティッヒ氏の創作で、1967年 デンマーク バーテンダー協会カクテルコンペティションの優勝作品です。
イエスタデイ(スタンダード カクテルレシピ)
ジン 40cc
オレンジキュラソー 10cc
ライムジュース 10cc
カンパリ 1dash
レシピ ◇
ジン 40cc
ホワイトキュラソー 5cc
ブルーキュラソー 1dash
シトロンジェネバー 7cc
レモンジュース 7cc
以上をシェークして冷えたカクテルグラスに注ぐ