カクテルデータベースを作るにあたってカクテルのレシピや技法など、参考にした本


     これらの本はいるか喫茶バーの本棚に常備しておりますのでご自由にお読みいただけます。

1.サヴォイ カクテルブック(日本語版)



 編著者 ピーター・ドレーリ
     サヴォイ・ホテル
 訳 者 日暮雅通
 発行所 パーソナルメディア

 現在、イギリスのサヴォイ・ホテルのアメリカン・バーのヘッド・バーテンダーはピーター・ドレーリである。
 日本語版「サヴォイ・カクテルブック」の出版にあたって彼がこの本の冒頭で日本の読者に向けて次のように書いている。

(以下引用)
 1930年に初めて出版して以来、世界中のバーテンダーに愛され続けてきた、「カクテルの原点」とも言うべき
The Savoy Cocktail Book"。伝説の名バーテンダー、ハリー・クラドックが著したそのカクテルブックが、いま、オリジナルの挿絵とともによみがえり、日本語版として出版されることになったのを、大変うれしく思います。
 この本を読むことで、皆さんが百年を越えるサヴォイ・ホテルの歴史を味わい、楽しんでいただければ、幸いです。そして、いつの日かぜひ、私たちの"アメリカン・バー"にいらしてください。この本に書かれたどんなカクテルでも、お作りします。それだけでなく、あなただけに合う、とびきり素敵なカクテルも!
(引用以上)
 つまり、この本はサヴォイ・ホテルのアメリカン・バーのカクテルメニューみたいなもんだ。ただし、値段は書いてない。
 サヴォイ・ホテルのアメリカン・バーに行けば、この本に載っている877種のカクテルはどれでも注文OK。
 この本のカクテルのレシピは、いまや、スタンダード・カクテルの世界標準ともなっている。
 それにしても、挿絵やコメントが面白い。初版の著者である、ハリー・クラドックのウィットに富んだコメントを読むだけでも値打ちがあるというものだ。彼は、アブサンを使うカクテルを作りたくなかったのだろうけど、たとえば「バニー・ハグ」のコメントには「このカクテルは、手遅れにならないうちにさっと流しに捨ててしまうべきだ。」とか、「チョーカー」のコメントには「これが飲めればなんだって飲める。・・・」と書いている。そこまで書くのに本に載せているのが面白い。
 サヴォイのレシピによればドライマティーニも、ギブソンですらもよくシェークしてつくることになっている。昨今の一遍倒なドライ志向を反省すべき原点がここにある。
 いつの日かサヴォイ・ホテルのアメリカン・バーに行くことができたとして迷わず注文するカクテルは、間違いなく、
 「ホワイトレディー」。

2.カクテル テクニック



 著 者 上田和男
     (うえだかずお)
 発行所 柴田書店

 東京中央区のバー「TENDER」のオーナー・バーテンダー上田和男氏による彼のこだわりを記した本。
 上田氏の40年ものバーテンダー歴に裏打ちされた彼のテクニックは世界的にも認められている。
 その一つが、シェークのテクニック。(彼はシェイクと表記する。)「錐揉み三段振りハードシェーク」だ。その技法が写真入で解説されているのは興味深い。シェーカーの中で材料が高速回転するような振り方だ。独自のシェークのフォームはYouTubeで見たことはあるが、いつか目の前で見てみたい気もする。フレア バーテンディングなんて目じゃないほどの派手なアクションと緊張感がある。僕みたいに何の気なしのいい加減な振り方じゃない。
 バーテンダーのことをバーテンと略して言うことがあるが、「TENDER」に行ったとして、上田氏のことを、「バーテンさん、派手に振りますねー。」なんて笑って言ったらどんな顔されるだろう。想像を絶するが、少なくともカウンターに座っているお客さん全員から冷たい視線を浴びることだろう。

3.新版 バーテンダーズマニュアル



 監修者 福西英三
 著 者 花崎一夫
     山﨑正信
 発行所 柴田書店

 サントリーのフードビジネス・スクールの教科書として使われていそうな(実際のところは知らない。)本。とにかくカクテルやお酒に関する細かな知識が)余すところなく書かれている。例えば、右の写真はカクテルのグラスに使われる、ソーダガラスとクリスタルガラスの成分や特徴の違いについて書かれている部分である。こんなことまで知っていて、一体何の役に立つのかわからない気もするが、一事が万事こんな調子で、カクテルやお酒の知識の集大成と言おうか、事典と言おうか、わからないことが出てきたときにこの本を読めば、ほぼ間違いなくその疑問は解決されるだろう。この本によって解決されないわからないことは、わからないまま放っておいて何の問題も無い。
 バーテンダーズマニュアルということだが、全てのバーテンダーがこの本の内容を知識として持っていなければならないとは思わない。例えば氷の形状による分類では、七種類もの名称が上げられており、それぞれの特徴が細かく記されている。そこまで知っているバーテンダーは全国に何人居るのだろう。

4.カクテル ベストセレクション 250



 監修者 若松誠志
     (わかまつせいし)
 発行所 日本文芸社
 
 著者の表記はない。ナヴィ・インターナショナルという会社がホテルオークラの5階にあるオーキッド・バーなどの協力で作った本。麻生太郎氏が カウンターで葉巻をくゆらせながらバーボンか何かを飲んでそうなバーだね。よく知らないけど。
 それはさておき、この本の写真はきれいだ。グラスもきれいだし、本当においしそう。当たり前かもしれないが、実際に作ったものに違いない。
 技法や材料、道具についての解説も明解。一番気に入ったのは、冒頭の部分にある小説の中のカクテル、映画の中のカクテル、音楽の中のカクテルという興味深い読み物。それほど枚数は割いてないですがちょっとした話の種に読んでみるのもいい。

5.カクテル 大事典 800



 発行所 成美堂出版
 
 著者や監修者の表記はない。アサヒビールやサントリーの協力を得ながら出版社が編集したもの。
 ビールベースのカクテルがやたらとたくさん書いてあるのは、アサヒビールの影響がありそう。しかし、レシピの数は半端じゃない。かなりマイナーなカクテルまでカバーしている。しかも全部写真が付いている。この写真だけでも撮るのは大変だったと思うが、悲しいかなたまに間違っている。例えば、キールはカシスを入れるのに白ワインそのものみたいな写真になっている。全てのカクテルに度数が書いてあるが、理解に苦しむ場合がある。「カジノ」の度数は39度?「ギブソン」でも36度と書いてあるが。まあ、使うジンにもよるだろうけど、そのあたりの整合性、一貫性には疑問がある。まあ、仕方ないと思う。なにしろ800種類も載せているのだから。何を隠そう、いるか喫茶バーのカクテルメニューはこの本のおかげで大幅に数が増えた。だから、最もお世話になっている本なのだ。一番使い込んでいる本。それだけに細かいところまで見るからいろいろ目に付くところもある。でも、これだけ写真やレシピが載っていて実用的だから¥1500は安いと思う。

6.カクテル・レシピ 500 2004年版



 監修者 桑名伸佐      (くわなしんすけ)
 発行所 成美堂出版

 著者の表記はない。前項の「カクテル 大事典 800」を読みやすいように再編したようなもの。写真やコメントなどは使い回しが多い。
 何でまたこの本を買ったかと言うといろいろ特集記事があって、その中でも「陽気なスピリッツ RUMベースのカクテル100」という特集記事に興味があったからだ。バカルディの151で作る、「カストロ」なんていうカクテルは近いうちにいるか喫茶バーのレパートリーにも加えたい。
 世界で最も多く消費されているスピリッツはウィスキーでもブランデーでもジンでもなく実はラムなのだ。カリブ海の島々で作られるこのスピリッツは、とにかく明るく楽しいカクテルのベースとなる。
 スピリッツの中で僕はジンが最も好きだが、あと何年かするとラムの方が好きになるような気がする。