ドライマティーニ   ¥460       

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ベース : ジン
グラス : カクテルグラス
飲み切るべき時間 : ショート
炭酸 : なし
普遍性? : スタンダード
味の傾向 : ベースの味重視
甘さ : ドライ(辛口)
色の傾向 : 無色,透明
作り方 : ステア
度数 : 31度(高い)
その他 : 大人系,男が飲む系,定番・有名,物語がある
時と場合 : どんな時もOK,食前酒,いつの季節でもOK
何か特別な状況 : としては、しかめっ面で黙って飲めばいいように思われる。
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  コメント  
ジンとベルモットの比が10:1以上になればドライマティーニと呼んでいいかと思う。

マティーニはもともとジンの方が少なかったとも言われるが、マティーニの薀蓄だけで本が
何冊も書けるほどだから、こういう話をやりだすつもりはない。きりがないから。
いるか喫茶バーでは、ジン:ベルモットはマティーニが5:1で、ドライマティーニが11:1。
マティーニはシェークで作り、ドライマティーニはステアで作る。
しかし、ある人にとっては「それは邪道だ。」ということになる。
かつて、巷のバーではマティーニをめぐってのさまざまな無意味な論争が繰り広げられていた。
1980年頃から1990年ごろまで。今となっては滑稽な昔の話だと思う。
消費が美徳とされ、人々は時間やお金をいかにして消費するかということに頭を悩ませていた。
木屋町、先斗町、祇園界隈のバーでは1杯千円以上のカクテルが飛ぶように売れ、
バーテンダーは開店から閉店までひっきりなしにシェーカーを振り続けた。
彼らの多くがシェーカーの振り過ぎによる腱鞘炎という職業病をかかえていた。
ワイシャツのそでをクリップやアーム・バンドで止め、サスペンダー付きのズボンに麻のジャケット
といった服装の、しかめっ面をした若いサラリーマンたちが
マティーニをめぐって無益な競争や論争をしていた。
ドライ競争においては、ベルモットの量は5cc、1ティースプーン、1ダッシュ、グラスに塗る、
瓶を置いて眺めるだけ、横目で眺める、…というように激化した。
レシピの論争においては、ジンの銘柄に始まり、ステアの回数にいたるまで事細かな議論がなされた。
ワンレン、ボディコンのOLたちはそれとは対照的に、飾りの付いたオシャレなトロピカルカクテルを
競って注文した。彼女たちにとってカクテルはファッションアイテムの一つであった。

何が王道か何が正しいかをめぐって答の出ない堂々巡りが繰り返される、「回転木馬のデッドヒート」
が最高潮に達した頃、プツリとサーキットブレーカが飛んだ。
あたりは停電したかのように静かになった。バブルの崩壊。
マティーニをめぐる競争や論争はそれ以来行なわれることはない。
トロピカルカクテルをゆっくり飲む女の子たちもどこかに行ってしまった。

  レシピ  
ジン55cc
ドライベルモット5cc
以上をステアして冷えたカクテルグラスに注ぐ。
オリーブを飾り、
レモンピールを絞る。