サンダークラップ   ¥400       

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ベース : ジン,バーボン,ブランデー
グラス : カクテルグラス
飲み切るべき時間 : ショート
炭酸 : なし
普遍性? : スタンダード
味の傾向 : ベースの味重視
甘さ : ドライ(辛口)
色の傾向 : 琥珀,透明
作り方 : シェーク
度数 : 32度(高い)
その他 : 大人系,男が飲む系,物語がある
時と場合 : どんな時もOK,食前酒,いつの季節でもOK
何か特別な状況 : としては、強いお酒で酔いたいときに飲めばいいように思われる。
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  コメント  
サンダークラップとは激しい雷鳴のこと。
落雷のバリバリという音。ゴロゴロじゃなく、バリバリですね。
転じて、突然のアクシデント=青天の霹靂という意味もある。
サヴォイ・ホテルのカクテルブックには「出したら全速力で走って逃げる。」と書いてある。
恐ろしくキツイお酒というイメージ。実際に強い。何しろブランデー、バーボン、ジンという
3つのスピリッツを等量ステアしたというもの。(いるか喫茶バーではシェーク)
しかも、ブランデーは葡萄の果実酒でバーボンはトウモロコシなどの穀物酒。
成り立ちの異なる果実酒と穀物酒を混ぜることはカクテルの通説ではミスマッチというか、
タブー視されている。さらに、香草の香りを放つジンが加わる。
考案者は罰ゲームのために作った。
個性的な香りの3つのスピリッツが合わさりアルコールの強さとあいまって、
まさに激しい雷鳴のように衝撃的な味になることを狙ったのだ。
しかし、その思惑は見事に外れた。
それぞれのスピリッツの個性が損なわれることはないのにすっきりと馴染んだ味になったのだ。
辛口には違いないが、マイルドでさえある。
これは驚きであり、常識派のバーテンダー達にとってはまさに青天の霹靂となった。

一般にステアよりもシェークの方がマイルドに仕上がると言われている。
いるか喫茶バーでは、このカクテルをよりマイルドに仕上げるためにステアでなく、シェークで作る。
このカクテルのコンセプトは「青天の霹靂」であり、それは単にキツイ酒ということではなく、
キツイ酒を混ぜてキツイと思って飲んだら意外にマイルドであるという予期せぬ結果から
常識を覆されることによる衝撃を受けることが青天の霹靂なのであって、
その衝撃をより強くするのがシェークなのだ。
シェカラートというカクテルがあるが、これはカクテルと呼ぶにはいささか抵抗があるが、
カンパリをシェークしただけのものである。シェークそのものの効果を期待して作られた。
確かにカンパリをロックで飲むよりもマイルドである。

僕は、カクテルの第一条件を「飲みやすいこと」と考えている。
だから、マティーニであってもシェークで作る。

20年ほども前からのドライ志向はもはや行き過ぎの感があり、揺り戻しの動きも必要だ。
どんな場合にも極端な傾向には良い点よりも弊害が目立ってくる。
世の中の数々の傾向というのは極端から反対の極端へと振り子のように揺れ動くことを繰り返している。
ちょうどよい中庸なところで静止することはない。むしろそのところは最もスピードがあり、
一瞬で通過してしまうものなのだ。
ドライ志向に走り過ぎたカクテルをシェークしてやれば、少し中庸な方向に持って行ける。

では、シェークすれば何故角が取れたマイルドな口当たりになるのか。
三段振りハードシェークで有名な銀座「TENDER」のオーナーバーテンダー上田和夫氏は、
シェークのイメージについて次のように語る。(彼はシェークをシェイクと表記する。)

以下「カクテルテクニック」(上田和夫)より引用
私のシェイクのイメージをお話しよう。まず酒の元素を正方形と仮定する。シェイクは、
四方の角を削って丸みを出すものと考えられがちだが、私は正方形の酒に気泡を送り込んで、
丸く膨らませるというイメージを持っている。気泡が、素材の強さやアルコールの強さを
直接舌に感じさせないクッションのような役割を果たす。気泡によって膨らんだ酒は、
丸みのある味として仕上がるのである。そして寄り添っている酒の元素が最終的に結合していく。
これが私がシェイカーをふっているときのイメージだ。気泡を作り出すこと。これが、
私のハードシェイクの最大の、そして最終的な目的なのだ。
引用以上

泡です。しかもこれが細かいほど長持ちするし口当たりが良い。
例えばビール。極端なドライ志向の人は「ノーヘッド」とか言って、泡無しをしかめっ面で飲む。
ビールだって細かいクリーミーな泡を、ほど良くからめて飲めばマイルドです。
カクテルの表面に浮かぶ細かい氷についても口当たりをマイルドにするように言われているが
上田氏は、これについては懐疑的である。この細氷はあくまでハードシェークの副産物で
大した意味はないと。細かい氷をたくさん作るために大げさなアクションで振り、
シェーカーのボトムとストレーナーにバンバン内部の氷をぶつけるようなやり方は
良くないらしい。内部の氷がばらばらになりすぎてストレーナーの穴が詰まってしまうだけだと。
シェーカーの中の氷は直線的なピストン運動ではなく高速に回転しなければならないと。
そのために三段ぶりやひねりやスナップをきかせた動作が必要だと。

僕ははっきり言って泡も氷も好きです。ひねりや回転は無理。けっこう大げさに振って
内部の氷をばらばらにするタチです。ハードシェークというよりワイルドシェーク。
あと10年ぐらいやったら本当のハードシェークがわかってくるかな。

泡は細かいほど長持ちしますが、やはり注いだ直後が最高の状態。
特にスピリッツだけだとすぐに消えちゃうので、できましたらショートタイムでお飲みください。

3つのスピリッツを等量シェークしたものは、他にオリジナルのスリーフリッパーがある。
こちらはジンとラムとテキーラ。サンダークラップと飲み比べてほしいです。

  レシピ  
ブランデー 20cc
バーボン 20cc
ジン 20cc
以上をシェークして冷えたカクテルグラスに注ぐ。